Vol.6 レトロな大型ミシンから産み出されるどこにもないバッグとは?

2009年4月 8日 14:33 更新

「妻の親が職人だったのが縁で、戦前からバッグを作っています。結婚して5年くらいは、一本いくらで問屋の方に納める下請けの職人としてやっていたけれど、つまらないから自分で会社を作ったんです。」と話す、株式会社マキタの代表取締役、蒔田さん。
株式会社マキタは創業から今年で45年。当時創業したばかりの大手ゴルフメーカーに、ボストンバッグを出荷していたという。「最初はボストンだけだったけれど、ちょうどキャディバッグを作っていた会社がなくなって。一緒にキャディバッグも作るようになったんです」。
メインは旅行用のボストンバッグだったが、今の主流はファッションバッグ。老舗の「キタムラK2」や、若者に絶大な人気を誇る「ビームズ」などからも発注を受けている。
「バッグの修理なども行っています。使ってもらって初めて分かる、強度のバランスも、修理をやっているから改善できるんです」。
同じように作るのではなく、次ははじめから補強をするなど、日々バッグの技術も進化しているのだ。

(株)マキタで行うのは、各パーツを縫い合わせて、ひとつの製品にする仕上げ作業。本体となる生地を型紙に合わせて切り取り、場合によっては特殊な加工を施したものを受注する。
「特に傷みやすい持ち手の部分は、一番大事な部分なので、ひとつずつ手縫いをしていたりするんです。うちでもちょっとは作りますが、専門の職人さんにお願いしたりもします」。
とはいえ、縫うのは職人の専売特許だ。どんなものでも縫えてしまうのが職人の匠の技といえる。
「夏の展示会では、ベニヤ板を縫い合わせて、夏向けのバッグを作りました。無駄な力がかからないから、割れてしまったりはしないんですよ」。
さらに蒔田さんが見せてくれたのは、1890年代に作られたアメリカのミシン。
「思わず衝動買いしちゃったミシンなんですけど、0番というキャディバッグなどで使う極太の糸を通して縫えるんです。しかも立体的な形のものを」。
通常は上糸と下糸を合わせて縫うが、これは1本糸のみなので、仕上がりのステッチがすっきりと美しい。立体的なものに、このステッチを付けて縫うのは、ここでしかできない特殊な技術なのだ。
「道楽の延長ですが、このミシンを使って、何か新しいバッグができるんじゃないか、とずっと考えています。たとえば、川口の方で見つけた、革の立体加工をする技術と合わせれば、フォルムの美しいバッグが作れるんじゃないかと思うんです」。このほかには、中国には真似のできない、細かな模様が織り込まれたジャガード生地のバッグ。「中国で安価なものを大量に作って、日本で売るというスタイルは、もう終わるんじゃないかと思います。私は、逆に本物志向が高まってきている中国の富裕層をターゲットにしたいですね」。
革の加工技術、布生地に模様を編み込む技術、それらを組み合わせられる、縫合と成形の技術は、もっともオリジナルブランドが生み出せる力なのだ。日夜遊び心の光る試作品を楽しそうに作る蒔田さんの手の中には、"メイド・イン・ジャパン"の魅力が詰まったバッグが、もうあるのかもしれない。

株式会社 マキタ
住所 東京都墨田区東墨田2-13-13
電話 03-5247-1711


1890年代のアメリカで使われていた特大の縦型ミシン。馬の鞍など立体的なものを縫うことができる 梱包作業の様子。完成した製品は、ひとつずつ丁寧に包まれて、各倉庫に届けられる

化粧ポーチから旅行バッグまで、ジャガード生地を使ったバッグの数々。桜の華やかな模様が丁寧に編みこまれている ベニヤ板を縫い合わせて作った、遊び心のあるバッグ。板を割らずに完成できるのは、縫合の技術が高度だからこそ



立体に加工された牛革をバッグの底にすえたショルダーバッグ。滑らかな曲線のフォルムと、くっきりとした風合いのステッチは、蒔田さんのみが出せる技術


故障したバッグは、製作元に返送されて修理が施される。職人高木さんのこだわりは、できる限り新品同様に直してあげること