Vol.3 下町のゴム長靴がパリコレで紹介!!

2009年4月 8日 14:05 更新

「6年ほど前に手がけた、大手アパレルメーカーのプリントデザインブーツが転機になりました。当時のパリコレでも紹介されたみたいですよ」と、語る、(株)ウッドヴァリの現取締役の森谷英司さん。

転写の技術自体は昔からあったものだが、全面にプリントを施したものを作ったのはここが初めて。生のゴムシートに大判の転写シールを貼り込む作業は、高度な技術が必要な上失敗が許されないため、森谷さんの専門になっている。
昭和31年、父親で会長の森谷昇さんが創業した当時、都内に36社あったゴム靴製造業者は今ではここだけ。低コストで生産できる中国製品などに押されて厳しい状況になったが、ゴム靴=作業用という固定概念を覆す、ファッション性の高いプリントデザインブーツを手がけると、その技術水準の高さから、革靴業界からの注文が入るようになった。

「革靴の要領でゴム靴を作ってほしい、と言われたんですよ。ゴム靴は型に流し込むと作りやすいのですが、革靴はパーツごとに張り合わせて作っていくので、手間がかかるんです。ただ、型を作ったら同じものしか作れないのと違って、パーツで作る製法を確立したことで、さまざまなデザインでも対応できるようになったわけです」

生のゴムシートは傷つきやすいため、(株)ウッドヴァリでは外注をせず、自社生産している。帯状に切り分けられた生ゴムのシートをアルミの型に貼り付け、長靴の形を作っていくのが基本だ。技術自体は難しくないとはいえ、ゴムの性質を知り尽くしていないと美しい仕上がりにはならない。切り抜いたパーツを丁寧に貼り合わせた製品を加硫器に入れ、一定時間加熱・加圧することで、生ゴムに弾性や耐久性に優れた性質を持たせる。それぞれの工程をすべて手作業で行うので、1日に生産できるのは、200足ほど。長靴に限らず、パンプスやスニーカーも作り、今はパンプスが主流。40~50足でも注文を受け付けている。
「何十年も昔から、長靴の作り方は変わりません。生のゴムは餃子の皮のように柔らかいのでコツが必要です。とりあえず、なんとか貼れるようになるまで、私は3ヶ月くらい掛かりました。今は大量生産の時代ではないですから、細かい作業をどれだけ早くきれいに出来るかが勝負。ちっちゃい埃が付いてしまったせいで返品もありますよ。」

ゴム靴のメインといえば、農作業用の長靴や、消防や自衛隊などに収めるもの。安定性を求めなかった選択が吉とでるか凶とでるかはこれから。平成19年から経営を先代から譲られた今、森谷さんが大事にしているのは、対応の柔軟さだ。

「お客さんはゴムを理解していないから、逆にこちらの固定概念を崩してくれます。だから、生産性や作業の面倒さは考えずに、とにかく話を聞いて、アイディアを引き取ってみることにしています。それに応えられるスタッフと技術、経験には自信がありますから。楽をしようと思ったら、ダメですね」

メーカー主導の大量生産がもてはやされた時代は終わり、今後はいかにローコストで買えるかではなく、いかに希少性の高いモノか、が求められている。高品質なのはもはや当たり前、それでいて他にはない商品、オリジナリティのある商品を消費者は求めているのだ。高品質で他には真似のできないモノ作り。これからのマーケットが日本の企業に求めているのは、こういった柔軟な企画力とそれを実現する技術力、職人力なのではないだろうか。クライアントの幅広い注文に応え、工場内に所狭しと積まれた試作品の数々。メイド・イン・ジャパンの真髄はここにある。


株式会社 ウッドヴァリ(婦人用ゴム靴製造)
住所 東京都葛飾区立石8-48-10
電話 03-3691-6938



(写真上)
技術水準の高さを物語る、大型の転写シールを施した最初のプリントデザインブーツ。最初に依頼があったのは大手アパレルメーカーから6年ほど前のこと



(写真上・左)
現在の主流商品は婦人のパンプス。色やデザイン、形もさまざまなものが揃っている
大型の転写シールを貼り付けたゴムシートを、ブーツの形に張り合わせていく


材料となるゴムシートは、輸送過程での傷を防ぐため外注はしていない。厳選の天然ゴム原料から自社生産している


パーツごとに切り分けられたゴムシート。革靴を作る工程を取っているため、さまざまな注文にも対応できる

生ゴムのままではべたついてしまうため、成形した製品に専用の塗料を塗る。ツヤのあり、なしなどの調節はこの工程で行う


専用の装置で圧力をかけ、のりを塗った靴の本体と別に作った靴底をしっかりと張り合わせる。
既存の製品に、先代が独自に設計した圧力・加硫時間などを制御する装置を組み込んだ、加硫缶