Vol.1 日本で数少ないキャディバッグ工場「サカマキ」

2009年4月 6日 15:17 更新

「この道に入って50数年。15歳でカバン屋に就職してから一筋です。自分で職業を自由に決められない時代でしたからね。まぁ、勉強は嫌いだったけど図工だけは得意で手先が器用だったから、先生がそういうところを紹介してくれたんでしょう(笑)。中学の時には卒業文集の表紙も頼まれて描きましたよ。木版を彫ったスタンプみたいのを作ってペタペタ押して絵に仕上げました。そういうことをするのが昔から好きだったんですよ」

 酒巻 次男さんが(株)サカマキを創業したのは28歳の時、今から40年ほど前。勤めていたカバン屋が倒産し、カメラケースの下請け加工をしながら生計を立てていたところ、勤めていた時に付き合いのあったアパレル業者さんが引き続き請け負ってくれないか、と声を掛けられたのが起業のきっかけだったという。

 「"ゴルフバッグのサカマキ"と覚えていただけるようになったのは昭和50年代初め。とにかく懲り性というか妥協できないというか...マジメに製造技術を培ってきました。だから、基準の厳しいことで有名なバーバリー社の監査に通った時はうれしかったですねー」
坂巻さんの作業工程は型紙作りから始まる。平面のデザイン画を見ながら実際の立体サイズをイメージして、各パーツを厚紙に原寸大で切り出していく。もちろんデザイン画には細かいサイズなど何も記しない。

「"すごいですね!" と感心していただくのですが、長年の勘で「このラインはこの角度かな」とか、データが全て頭に入っているからね(笑)。ゴルフバッグの場合、パーツは70枚くらいになるかな。これをつなぎ合わせて実際の出来上がりイメージをつかんだら、サンプル製作に取りかかります。革を切り出す包丁は岩田屋(工具店)のものです。使っては研いで、短くなったら新しいのに買い替える、の繰り返し。バインダーなどの工具も20数個は使います。パーツが多い分、職人の技の見せ所も多いので、ゴルフバッグはやり甲斐の大きい仕事ですね」

実際にデザイン画を見ると、前と後ろ側が見える絵が2枚あるだけだ。この絵から3次元になったときに、どこをどの程度ボリュームを持たせるかにより、フォルムはまったく変わってきてしまう。デザイン画だけで、美しいキャディバッグのフォルムを一発で出せるには熟練された職人の勘がモノをいう。


「ここ十数年は"とにかく安いものを"という考えが主流ですが、少しずつですけど、最近は"日本でしか作れないものを"と流れが戻ってきている感じもします。北京オリンピックまでには中国の人件費も高騰するでしょうから、海外の安い労働力で大量生産という考えも薄れていくかも知れませんね。日本の技術の高さを皆が再認識してくれる時代も近いんじゃないでしょうか」

そう、誰にも真似のできない日本の匠に再び脚光を浴びてもらいたいものだ。そして、その素晴らしい商品という作品を世界に送り出していきたい。


厚紙で作られた各パーツの型紙。プランナーから届いたデザイン図を見ながら立体をイメージして原寸大に起こしていく



サカマキでは全工程を熟練の日本人スタッフが手作業で仕上げる。有名ブランドの監査に通るハイクオリティたる所以だ


使い込まれた工具の数々。縫い合わせ部分にバイヤステープを巻くバインダーは<三ツ巻><玉ぶち>などを使い分ける

裁断に使う包丁は岩田屋工具店のもの。鍛造火造(たんぞうひづくり)で仕上げる岩田屋の刃物は多くの職人に愛用されている

こだわり満載のcomo!come! 製品は「いまだかつてない厳しい仕事だった」とか